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研究成果|自然言語の情報処理と身体運動の情報処理の融合
記号とは,指し示すものと指示されるものが結び付いたシステムである.記号の結び付きは,物理的な絶対性に支配されず,記号が使われる社会・文化に特有かつ恣意的である.この恣意性が,記号の利便性を高め,言語へと昇華させる源である.人間は,この言語があるがゆえに,実世界を記号として理解し,豊かな推論を行い,効果的に他者とコミュニケーションを取ることができる.すなわち,ヒューマノイドロボットの知能の最終目的は,言語を使える情報処理を構築することと言っても過言ではないであろう.
これまで身体運動から記号を獲得するヒューマノイドロボットの知能の設計に関する研究を行ってきた.身体運動がノードとエッジで構成されるグラフィカルな統計モデルとして記号化される.グラフィカルな統計モデルは,自然言語処理のコミュニティにおいても広く活用されており,私たちは身体運動の記号と自然言語処理が高い数学的整合性をもって繋がるのではないかという着想に至った.
本研究では,運動の記号と単語の間の連想構造を表現する運動言語モデルと文章の構造を表現する自然言語モデルを統合するための枠組み,および運動と文章の間の双方向の情報処理を開発した[1][2][3].ヒューマノイドロボットが運動を観察すると,その運動記号から運動言語モデルを用いて単語を連想する.その単語を自然言語モデルを用いて並べ替えることによって文章を作成することができる.これは,ロボットが運動を言語として解釈する計算に他ならない.また,文章から自然言語モデルを用いて単語を抽出して,その単語から運動言語モデルを通じて運動記号を連想する.これは,ロボットが知覚した言語からその言語が表す身体運動を連想する計算に相当する.さらに,文章間の連想モデルも構築し,実世界の運動を基礎とした連想,運動と言語の連想,言語間の連想といった多様な連想計算が可能になりつつある[4].文章間の連想モデルによって,ヒューマノイドロボットが本を読むにつれて実世界で経験していないことを容易に学習し,実世界での振る舞いを身に着けることができる未来社会へ近づく技術である.
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[1] |
高野 渉,山根 克,中村 仁彦, “運動記号と運動ラベルの連想モデルに基づく運動データの検索・生成計算”,日本ロボット学会誌,Vol.28. No. 6, pp.723-734, 2010. |
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[2] |
高野 渉,鮎澤 光,濱野 聖也,梅澤 慶介,中村 仁彦,“身体運動と言語を結ぶロボットの統計的情報処理”,日本ロボット学会誌,Vol.30, No.7. |
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Seiya Hamano, Wataru Takano, Yoshihiko Nakamura, “Motion Data Retrieval Based on Statistic Correlation between Motion Symbol Space and Language,” IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, pp.3401-3406, 2011. |
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[4] |
Wataru Takano, Minoru Kanazawa, Yoshihiko Nakamura : “Motion-Language Association Model for Human-Robot Communication,” Proceedings. of 12th International Symposium on Experimental Robotics, 2010. |
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