Human-Machine Communication Project Human-Machine Communication Project
ロボットの脳を創る Robot Brain Project
はじめに
研究成果
身体運動コーパスの構築
人間の深部身体感覚の推定とその構造化
自己とモノ,自己と他者の間の関係性コーパスの構築
自然言語の情報処理と身体運動の情報処理の融合
自然言語と身体運動感覚でコミュニケーションするヒューマノイドの開発
ヒューマノイドとヒトの力学パラメータの同定
ヒトとロボットのインタラクションのための基礎技術
ヒューマノイド歩行パターンの生成,計画,安定化のためのエネルギーコスト最小化問題の求積法
論文リスト
招待講演
映像
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受賞
特許
おわりに







研究成果|ヒューマノイドとヒトの力学パラメータの同定


本研究テーマでは、ヒューマノイドロボットや人などの脚移動システム全般に対 して,質量・重心・慣性テンソルなどの力学パラメータを同定する技術を開発した.ヒューマノイドが周囲の環境や人間と接触しながらタスクを行うといった高性能な運動能力を実現する上で,精度の高い動力学モデルに基づく運動制御は極めて重要となる.また人の運動解析において,各個人ごとの特徴や差異を精度良く求める上で,個人の人体力学モデルの簡易的かつ非 侵襲な計測技術は極めて有用である.

ロボットの力学パラメータの同定技術は1980年代から盛んに研究され,技術としてほぼ確立している.一般的には同定をする上で,ロボットの全ての関節角度と関節トルクの計測を必要とする.ただし既存の技術は,土台が固定された低自由度の産業用マニピュレータを対象としている.一方,脚移動システムは,@環境に固定されておらず,A大自由度であり,B全ての関節トルクの計測が困難なため,既存の手法での同定は困難である.

脚移動システムのリンク機構を木構造で表現した場合,その根本(ベースリンク)の運動方程式のみから,全身の力学パラメータが可同定であることを証明した[1].この証明に基づき,ベースリンクの同定式を利用して,関節トルクを一切計測せずに,関節角度とシステムに働く外力の計測のみから,全身のパラメータを同定する手法を開発した[2].加えて,同定されたパラメータが,例えば質量が正などといった,物理的整合性を必ず満たす手法も開発した[3].物理的整合性を考慮した最適化は,自由度の増加と共に計算量が爆発的に増大する.本手法では凸多面体理論を利用して,剛体を有限の質点集合で表現することで,計算量を大幅に低減している.この計算効率を利用して,人の力学パラメータをリアルタイムで同定して,同定結果を視覚的に表示するシステムを開発した[4].被験者は大きなスクリーンの前で,モーションキャプチャをされながら床反力計の上で運動するだけでよい.スクリーン上には自分を模した人体モデルが投影され,同定されている部位(緑色)とそうでない部位(赤色)が一目で分かるように色づけられる.被験者は赤く色づいた部位を動かすだけで,パラメータの同定に必要な運動を直観的に生成できる.全ての色が緑色に染まれば,その計測日での 各部位の質量・重心・慣性テンソルを知ることが出来る.


参考文献

[1] Ko Ayusawa, Gentiane Venture and Yoshihiko Nakamura: “Symbolic Proof of Inertia-Parameter Identifiability of Legged Mechanisms fromUn-actuated Base-Link Dynamics”, Proceedings of the 15th IFAC Symposiumon Systems Identification, pp.693-698, Saint-Malo, France, 2009.

[2] 鮎澤 光,ベンチャー・ジェンチャン,中村 仁彦,”ベースリンクの運動方程式を利用した脚型ロボットの最小力学パラメータの同定”, 日本ロボット学会誌, Vol.27, No.9, pp.1066-1077, 2009.

[3] Ko Ayusawa and Yoshihiko Nakamura: “Identification of Standard Inertial Parameters for Large-DOF Robots Considering Physical Consistency”, Proceedings of the 2010 IEEE/RSJ International Conference on Intelligent Robots and Systems, pp.6194-6201, Taipei, Taiwan, 2010.

[4] Ko Ayusawa, Gentiane Venture and Yoshihiko Nakamura: “Real-time Implementation of Physically Consistent Identification of Human Body Segments”, Proceedings of the 2011 IEEE International Conference on Robotics and Automation, pp.6282-6287, Shanghai, China, 2011.






 
       
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